KPIとは
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)は、目標達成の度合いを測定するための定量的な指標です。ビジネスの進捗を数値で把握し、適切なアクションにつなげるために使われます。
KPIの基本用語
| 用語 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| KGI | Key Goal Indicator。最終目標 | 年間売上10億円 |
| KPI | Key Performance Indicator。中間指標 | 月間商談数100件 |
| KSF | Key Success Factor。成功要因 | 良質なリード獲得 |
KGI・KPI・KSFの関係
【構造】
KGI(最終目標)
│
├── KSF(成功要因)
│ └── KPI(測定指標)
│
├── KSF(成功要因)
│ └── KPI(測定指標)
│
└── KSF(成功要因)
└── KPI(測定指標)
【例:BtoB企業の場合】
KGI:年間売上10億円
│
├── KSF:新規顧客獲得
│ └── KPI:月間商談数100件
│
├── KSF:成約率向上
│ └── KPI:成約率20%
│
└── KSF:顧客単価向上
└── KPI:平均受注単価200万円
良いKPIの条件
SMARTの法則
KPIは「SMART」の条件を満たすべきです。
| 要素 | 説明 | 良い例 | 悪い例 |
|---|---|---|---|
| S(Specific) | 具体的 | 新規問い合わせ数 | 認知度向上 |
| M(Measurable) | 測定可能 | 月間100件 | たくさん |
| A(Achievable) | 達成可能 | 前年比120% | 前年比300% |
| R(Relevant) | 関連性がある | 売上に直結する指標 | 関係ない数値 |
| T(Time-bound) | 期限がある | 2025年12月末まで | いつか |
良いKPIと悪いKPIの違い
| 観点 | 良いKPI | 悪いKPI |
|---|---|---|
| 数 | 絞り込まれている(5〜7個) | 多すぎる(20個以上) |
| 関連性 | KGIに直結 | 成果と無関係 |
| 計測性 | 簡単に計測できる | 計測が困難 |
| 行動 | アクションにつながる | 見るだけで終わる |
| 更新 | 定期的に見直す | 一度決めたら放置 |
KPI設計のステップ
ステップ1:KGI(最終目標)の設定
まず、達成したい最終目標を明確にします。
KGIの例
| 業種 | KGI例 |
|---|---|
| EC | 年間売上5億円 |
| BtoB | 年間受注金額10億円 |
| SaaS | MRR(月次収益)1,000万円 |
| メディア | 月間PV100万 |
| 飲食店 | 月商500万円 |
ステップ2:KSF(成功要因)の特定
KGI達成のために必要な成功要因を洗い出します。
KSFの洗い出し方
質問1:KGIを達成するために何が必要か?
質問2:競合との差別化ポイントは何か?
質問3:現状の課題は何か?
質問4:コントロールできる要素は何か?
BtoB企業のKSF例
| カテゴリ | KSF |
|---|---|
| 集客 | 質の高いリードの獲得 |
| 営業 | 商談の効率化 |
| 成約 | 成約率の向上 |
| 単価 | 顧客単価の向上 |
| 継続 | 解約率の低減 |
ステップ3:KPIの設定
各KSFに対して、測定可能なKPIを設定します。
KPI設定のフォーマット
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| KPI名 | 指標の名称 |
| 定義 | 何をどう計測するか |
| 目標値 | 達成すべき数値 |
| 現状値 | 現在の数値 |
| 計測方法 | どのようにデータを取得するか |
| 計測頻度 | 日次、週次、月次 |
| 責任者 | 誰が管理するか |
ステップ4:KPIツリーの作成
KGIからKPIへの分解を図式化します。
【EC事業のKPIツリー例】
売上(KGI)
├── 訪問者数
│ ├── 自然検索流入
│ ├── 広告流入
│ └── SNS流入
│
├── CVR(購入率)
│ ├── カート投入率
│ └── カート→購入率
│
└── 客単価
├── 平均購入点数
└── 平均商品単価
業種別KPI設計例
ECサイト
KGI: 月商1,000万円
| KSF | KPI | 目標 |
|---|---|---|
| 集客 | 月間セッション数 | 50,000 |
| 集客 | 新規ユーザー数 | 30,000 |
| 購入 | CVR(購入率) | 2.0% |
| 購入 | カート離脱率 | 70%以下 |
| 単価 | 客単価 | 10,000円 |
| リピート | リピート率 | 30% |
| リピート | LTV | 25,000円 |
KPIツリー
月商1,000万円
├── 訪問者数 × CVR × 客単価
│ └── 50,000 × 2% × 10,000円 = 1,000万円
│
└── 新規売上 + リピート売上
└── 700万円 + 300万円 = 1,000万円
BtoBサービス
KGI: 年間受注額5億円
| KSF | KPI | 目標 |
|---|---|---|
| 認知 | Webサイト訪問数 | 月10,000 |
| リード | 問い合わせ数 | 月50件 |
| 商談 | 商談化率 | 50% |
| 成約 | 成約率 | 20% |
| 単価 | 平均受注単価 | 500万円 |
| 継続 | 解約率 | 年5%以下 |
ファネル計算
問い合わせ50件
↓ 商談化率50%
商談25件
↓ 成約率20%
成約5件/月
↓ 受注単価500万円
月間受注額2,500万円
↓ ×12ヶ月
年間受注額3億円
※目標5億円には不足
→ 問い合わせ数を月80件に増やす
→ または成約率を30%に上げる
SaaS事業
KGI: ARR(年間経常収益)1億円
| KSF | KPI | 目標 |
|---|---|---|
| 獲得 | 新規MRR | 100万円/月 |
| 獲得 | CAC(顧客獲得コスト) | 10万円以下 |
| 継続 | 月次解約率(Churn Rate) | 2%以下 |
| 拡大 | アップセル率 | 10% |
| 効率 | LTV/CAC | 3以上 |
| 利用 | DAU/MAU | 40%以上 |
SaaSの重要指標
| 指標 | 計算式 | 目安 |
|---|---|---|
| MRR | 月次経常収益 | 成長率+10%以上/月 |
| ARR | 年間経常収益(MRR×12) | - |
| Churn Rate | 解約顧客数÷全顧客数 | 月2%以下 |
| LTV | 顧客生涯価値 | CAC×3以上 |
| CAC | 顧客獲得コスト | LTV÷3以下 |
| NRR | 既存顧客の収益維持率 | 100%以上 |
飲食店
KGI: 月商500万円
| KSF | KPI | 目標 |
|---|---|---|
| 集客 | 1日あたり客数 | 50組 |
| 単価 | 客単価 | 3,500円 |
| 回転 | 回転率 | ランチ2回、ディナー1.5回 |
| リピート | リピート率 | 40% |
| 効率 | 人件費率 | 30%以下 |
| 効率 | 食材原価率 | 30%以下 |
計算
50組 × 3,500円 × 30日 = 525万円
KPIダッシュボードの作り方
ダッシュボード設計のポイント
| ポイント | 説明 |
|---|---|
| 1画面で完結 | スクロールせずに全体把握 |
| リアルタイム | 最新データを自動反映 |
| アクションにつながる | 異常値がわかりやすい |
| シンプル | 必要な情報に絞る |
| 比較できる | 前期比、目標比を表示 |
レイアウト例
┌────────────────────────────────────┐
│ KPIダッシュボード 2025年1月 │
│ 更新日時:2025/1/24 10:00 │
├────────────────────────────────────┤
│ ┌─────┐ ┌─────┐ ┌─────┐ ┌─────┐ │
│ │売上 │ │CVR │ │客単価│ │目標 │ │
│ │850万│ │1.8% │ │9,500│ │達成率│ │
│ │↑5% │ │↓0.2│ │↑200 │ │ 85% │ │
│ └─────┘ └─────┘ └─────┘ └─────┘ │
├────────────────────────────────────┤
│ ┌───────────────────────────────┐ │
│ │ 月次売上推移(折れ線) │ │
│ └───────────────────────────────┘ │
├────────────────────────────────────┤
│ ┌─────────────┐ ┌─────────────┐ │
│ │ チャネル別 │ │ 商品別売上 │ │
│ │ セッション │ │ TOP10 │ │
│ └─────────────┘ └─────────────┘ │
└────────────────────────────────────┘
異常値の可視化
目標と現状の差を色で表現します。
| 状態 | 色 | 条件 |
|---|---|---|
| 好調 | 緑 | 目標の100%以上 |
| 通常 | 青 | 目標の80〜100% |
| 注意 | 黄 | 目標の60〜80% |
| 警告 | 赤 | 目標の60%未満 |
KPIマネジメントの運用
定例ミーティングの設計
| 頻度 | 内容 | 参加者 |
|---|---|---|
| 日次 | 速報値の確認、異常値対応 | 現場リーダー |
| 週次 | KPI進捗確認、課題共有 | チーム全体 |
| 月次 | 月次振り返り、翌月計画 | マネージャー以上 |
| 四半期 | 戦略レビュー、KPI見直し | 経営層 |
週次KPIミーティングのアジェンダ例
【週次KPIミーティング】60分
1. 先週のKPI実績確認(10分)
・各KPIの達成状況
・異常値の確認
2. 課題・原因の共有(15分)
・未達のKPIについて原因分析
・外部要因、内部要因の整理
3. 今週のアクション(20分)
・改善施策の検討
・優先順位の決定
・担当者と期限の設定
4. 今週の目標確認(10分)
・週次目標の設定
・各自のコミット
5. その他共有事項(5分)
PDCAサイクルの回し方
【Plan】
・KPIの目標設定
・達成のための施策立案
・アクションプラン作成
【Do】
・施策の実行
・進捗の記録
【Check】
・KPIの計測
・目標との差分分析
・原因の特定
【Act】
・改善策の立案
・次期計画への反映
・KPIの見直し(必要に応じて)
よくある失敗と対策
失敗パターン1:KPIが多すぎる
問題点
- どれが重要かわからない
- 管理しきれない
- 優先順位がつけられない
対策
- KPIは5〜7個に絞る
- 「これが達成できれば成功」というものを選ぶ
- 補助的な指標はサブKPIとして区別
失敗パターン2:KGIと連動していない
問題点
- KPIを達成してもKGIが達成されない
- 努力の方向がズレている
対策
- KPIツリーで因果関係を確認
- 定期的にKPIとKGIの相関を検証
失敗パターン3:計測できない・していない
問題点
- 数値がわからず進捗不明
- 後から振り返れない
対策
- 計測方法を事前に確定
- 自動計測できる仕組みを構築
- ダッシュボードで可視化
失敗パターン4:見るだけで終わる
問題点
- 数値を見ても行動につながらない
- 「見て終わり」のKPI
対策
- アクションにつながるKPIを選ぶ
- 異常値があったら何をするか決めておく
- ミーティングで必ずアクションを決める
失敗パターン5:一度決めたら変えない
問題点
- 環境が変わってもKPIが同じ
- 実態に合わなくなる
対策
- 四半期ごとにKPIを見直す
- 事業フェーズに合わせて更新
- 機能しないKPIは廃止
KPI設計のチェックリスト
【設計時】
□ KGI(最終目標)が明確か
□ KPIはKGIに直結しているか
□ KPIの数は5〜7個に絞れているか
□ 各KPIは計測可能か
□ 目標値は具体的か(SMARTか)
□ 達成可能かつ挑戦的な目標か
□ 責任者は明確か
【運用時】
□ 定期的に計測・更新しているか
□ ダッシュボードで可視化されているか
□ 定例ミーティングで確認しているか
□ 異常値への対応ルールがあるか
□ アクションにつながっているか
□ 定期的に見直しているか
まとめ:KPI設計成功のポイント
- KGIから逆算する:最終目標から必要な指標を導出
- 絞り込む:KPIは5〜7個に厳選
- 計測可能にする:測れないKPIは意味がない
- 可視化する:ダッシュボードでリアルタイムに確認
- PDCAを回す:見るだけでなくアクションにつなげる
- 定期的に見直す:環境変化に合わせて更新
KPIは「設定したら終わり」ではなく、継続的にマネジメントすることで価値を発揮します。まずはシンプルなKPIから始めて、運用しながら改善していきましょう。